介護入門  モブ・ノリオ

 この文章が読者をどこへ連れて行くのかサダカではないにしても、まるでボリス・ヴィアン的な乾燥した幻想に満ちた文章のスピードと強度が気に入ってしまった。文庫本に解説を寄せた筒井康隆は、近縁の文体としてセリーヌヘンリー・ミラー、ノーマン・メイラーの名を上げる。ラップを思わせる機関銃の如き饒舌体。確かにメロディーに堕落しないという点でこの文章はラップである。安易にメロディーに解決を求めるな。慰安も求めるな。メロディーは介護の地獄を解決しない。

第131回
2004年 前期
個人的評価 ☆☆

カイ  麻呂顔なのに、ラップもどきをやっちゃってるのが玉にキズの非常にまっとうな小説(山田詠美)
ヤリ  単なる一過性の小技にすぎないのであって、一篇の小説が内包する本質的な深さとは無関係(宮本輝)

 相当な奇癖の持ち主で、文學界新人賞受賞の際、写真を求められると祖父の写真を提出した。当然クレームがついたが、最終的には自分と祖父の合成写真が掲載されたらしい。http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A2%E3%83%96%E3%83%BB%E3%83%8E%E3%83%AA%E3%82%AA
 また芥川賞の受賞会見式では、「会見場に入ってくるなり、『ごめ〜ん』と叫びながら、6本のマイクがきちんとセットされていたテーブルに向かって思いきりダイブ。テーブルごとぜんぶひっくり返して、会場はシーン......。各メディアの音声担当者は、無表情のまま無言でテーブルを直し、マイクを拾ってもとどおり再セッティング。さらに、仕切り直しではじまった会見のモブ・ノリオ第一声は、『どうも、舞城王太郎です』」(大森望)会場はまたまたシーンと静まり返ったらしい。http://www.webdoku.jp/newshz/ohmori/2012/02/06/140859.html