熊の敷石  堀江敏幸

  これは若いフランス文学者のただの身辺雑記に過ぎないように思われる。しかし、一種超然として、ユダヤ人問題やボスニアの話を遠景のように語るこの筆致を好む人はいるかもしれない。「熊の敷石」なるタイトルの由来が小説の終わりのほうでようやく知らされるが、その「余計なおせっかい」という意味らしいタイトルと全体のハナシとの関連が良く分らなかった。
第124回
2000年後期
個人的評価 ★★
カイ  ヨーロッパ人の思考法の精髄をさりげなく取り出して並べる手つきがいい(池澤夏樹) 
ヤリ  あまりにもエッセー風で小説としての魅力に乏しかった(三浦哲郎)